2008年04月19日

新聞文字拡大に思う土曜の昼下がり

ご存知のように、新聞業界はここんとこ「大きい文字でよみやすい」紙面にシフトしている。
だが、このことが言論に与える影響に関する考察があまりなされていない。

いわゆる「知識人」と称される人はどう考えているのだろうか?

ブログ界では、このエントリ「マスコミ不信日記」http://blog.livedoor.jp/saihan/archives/51300394.htmlに、新聞情報を消費する立場として共感する私だが、一方、新聞を作る現場の記者の声がなかなか聞こえてこない。

そんななか、共同通信の記者が出稿したこのちょっとしたコラムが面白いので、敢えて全文引用・紹介する。


☆拡大文字≠゚ぐる悲喜こもごも 力士と記者の場合(2008.4.16 47NEWS)

入社や入学の時期である4月はスタートの季節だ。大相撲でも3月に入門した新弟子たちが、今月下旬に発表される夏場所の新番付に一斉に名を連ねる。地位は最下位の序ノ口で、番付表の一番下の部分となる。

 角界の隠語を意味する相撲用語に「虫眼鏡」がある。番付表で虫眼鏡を使わなければ名前を探すことができないほど、字が小さな力士たちのことを表す。主に序ノ口や序二段を指していて、確かに限られたスペースの中に小さく細い文字がぎっしりと詰まっている。新十両となった力士に新番付を見た感想を聞くと、ほぼ全員が言う。「しこ名の字が大きくなってうれしい」。力士にとって、自分の字がどんどん大きくなることは、この上ない喜びなのだ。

 字が大きくなるといえば、この春から新聞業界は軒並みに拡大文字を導入している。読者の目に優しく、お年寄りや子どもたちは親しみやすいだろう。しかし記事を書く記者にとってはどうか。

 活字が大きくなるということは、一定のスペース内に掲載される文字数や行数は減る。つまり書きたいことはまだあるものの、紙面の都合で書き切れない。メーン原稿の決められた行数は10年以上前と変わらないのに、文字の数だけがグッと少なくなったことに対し、わたしは多少のジレンマを覚えてしまう。「よりコンパクトに」「切り口を鋭く」とは言うは易しで、登場人物のコメントや名前、肩書だけであっという間に行数は進む。記者にとって大変な時代になったなと思う。

 今から10年前に初土俵を踏み、序二段時代からわたしが知っている28歳の力士がいる。押し相撲の彼は幕下生活が長いが、夏場所は自己最高位の幕下5枚目前後に躍進することが予想される。苦労に苦労を重ねながら、いよいよ夢の関取の座が視界に入ってきた。彼に番付について聞いてみると「入ったばかりのころは自分の名前が読めず、上に書いてある出身地で探してました。少しでも字が大きくなるのはうれしいですよ。今は幕下ですけど、もう自分の名前から探せますからね」。

 関取になれば番付のしこ名は太字となり、幕下以下とは一目瞭然(りょうぜん)。先ほどの彼は「十両に上がればですか? 自分のしこ名があんなに大きくなるなんて…。想像するだけでワクワクしますよ!。もっとけいこしないといけませんね」と目をらんらんと輝かせた。

 拡大文字≠めぐり、わたしと彼の思いは複雑に交差するが、ここは大きくなった活字で対抗するしかない。彼のように地道に頑張っている力士たちが成功を収めた時の原稿は、彼らの土俵人生が行間からグッとにじみ出るものにしなければ…。彼と同じく、わたしも「もっとけいこしないといけない」と実感している。



記者は、大相撲の番付表に絡めてコラムを構成しているが、書くスペース(文字数)がへらされたことに対して懸念を表しているように読めるがいかがだろう?

文字が大きくなって「嬉しい」力士と、微妙でやりきれない思いを捨てきれない自分を対比させて問題提起をしているわけだ。

まあ、






「悲喜こもごも」と見出しを打つことじたい、「やってらんねーよなー」という本音が見え隠れするわけだけども(本意でなかったら指摘してくださいね)、決して少なくない記者が同じような思いを抱いているのではないだろうか。

もちろん、新聞もビジネスなので「情報」や「オピニオン」を記事として売ることで「広告」を獲るわけだ。あるいは宅配を促進する。

その意味では新聞記者もどこかでコピーライター的感覚も必要といえる。
だが、そこに拘泥するあまり、文字数が少なくなることで、意を尽くせない、とか、正確な事実を伝えられないとなってしまったら、新聞として自殺行為に等しい本末転倒だろう。

「行間からグッとにじみ出るものにしなければ」
とコラムにあるが、それが必要ないとは言わないが、さまざまな誤読を誘発する危険もあると承知で精進<けいこ>してほしい。

お年寄りやこどもにもやさしい読みやすさ、というのも大事かもしれんが、言葉を重ねに重ねて意を尽くす・伝えるという愚直さも、新聞には必要なのではないだろうか。


posted by じんちゃむ at 15:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 企業活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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